癌ステージⅣを5年生きて 5

散骨の風ディレクター KYOKO

小豆島の気候と我が家の環境

私は、小豆島の気候が好きだ。湿度が少なく、夏でも4階の部屋は、テラスの戸と玄関のドアを開けて置けば、風が通りエアコンがいらない。冬もめったに雪は降らず、台風も気になるほどではない。だからオリーブ作りに向いているのだろう。隣もオリーブ畑だ。海側には、井上誠光園の寮が、一段低い丘の斜面に建っている。広い庭には様々な樹木が植えられていて、花の時期が楽しみだ。普段は誰も居らず、オリーブの収穫の時に、日本全国からアルバイトの若者たちが集まる。人が居ても居なくても周りは静かで、波の音しか聞こえない。窓から近くの池田港から出る定期船のフェリーの出入りが見え、船によってキリンさんや、パンダさんの大きなマークが見える。船からも家のマンションが良く見え、高松からの帰りには、そこに居る3匹の猫の事を思う。

ユニークな島の移住者たち

島には移住組のユニークな人々がいて、ある夫婦は東京でイラストレイター兼小劇場をやっていて奥さんは女親分風で頼もしく、女流作家は山羊を2頭飼い、猪の罠を掛けたり逞しい。北海道から来た若い夫婦はドロンで仕事をしているデザイナーだが、リタイアした両親も付いて来た。移住者ではないが、外国人の旦那さんと暮らすZさんは、豚を沢山飼っていて、スーパーの野菜売り場で、皆が捨てるキャベツや白菜の外側の葉を全部持って行き、残飯なども貰ったりしていて、どことなくベトナム風の雰囲気の彼女もユニークだった。しかし、一番ユニークなのは、散骨屋などしている私たちかも知れない。

島の事件

あるとき村の有志の集まりで、ホースセラピーの話が出た。馬の世話をしたり、乗ったり、馬を通して自閉症の人などが自立出来るようにする取り組みで、私もこの島でも出来ればいいと思ったが、実現には難しく、その話はなくなった。

平和な島なのに、住んですぐ殺人事件が起こった。映画「八日目の蝉」では、島の様子が良く描かれていて面白かったが、子供の誘拐犯はフェリー乗り場で捕まる。だから殺人犯も逃げ場が無いのでは等話していたが、親族殺人で犯人は一週間位であっさり捕まってしまった。

畑作りと貝掘り

私たちは落ち着いてから、野菜を作る場所を探していたが、有機野菜を売りに来たIさんから彼女の土地、有機園の片隅が空いているので、使っていいと言う承認を得た。家からは車で25分掛かったが、DIYで肥料や野菜の苗を何種類も買い、教えて貰いながら、キュウリやナス、トマト、トウモロコシ、しし唐、ゴーヤ、かぼちゃ等を育てた。

近くの防波堤では、メバルしか釣れなかった。しかし、一番面白くて凝ったのは、浜辺のマテ貝掘りだ。あさりなどの潮干狩りは、子供の頃によく行ったが、マテ貝の事は全く知らず、同じ階に住むYさんに誘われ、その面白さにはまってしまった。まずシャベルと塩を用意し、潮の引いた浜で砂の穴を見つけ、それらしい所に少し穴を掘りそこに塩を撒く、すると細長い巾1㎝から1.5㎝の竹のような物から頭が少し出て来る。その竹状の部分を素早く掴み引っ張り出すのだ。長さは10㎝から15㎝位で中に柔らかい身が入っている。普通はバーべキューなどをして焼くが煮ても美味しい。私は貝が大好物で、お寿司を食べに行ってもほとんど貝類しか食べない。魚の骨と皮、脂っこさが苦手で青魚は食べない。うなぎも穴子も鱧も駄目である。夫は逆に青魚が大好きで、お寿司も青魚ばかり食べる。

誰も居ない砂浜で、ひたすらマテ貝を掘る、これは最高だった。

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