癌ステージⅣを5年生きて 36

散骨の風ディレクター KYOKO

手術前の湯島散歩

湯島はいろいろな物が混在している面白い町である。近くにはサッカーミュージアムや折り紙会館が有り、前者には若いサッカーファンが、後者はテレビでも取り上げられたが、外国人の日本文化好きが訪れる。湯島天神、神田明神、湯島聖堂、由緒ありそうなお寺、時間制ホテル、オフィスビル、下町風商店等々。

我が家の2軒先には、見逃しそうな小さなケーキ屋さんがイギリスのお菓子を作り売っている。若く見える中年の女の人が1人で作り、販売しているのだ。シンプルな見掛けだが、なかなか美味しい。イギリスのケーキ等は、スコーン以外知らなかった。フランスともドイツとも違い、基本は生クリームを使わない柔らかいドライケーキ風だ。スパイスを入れ、にんじんやレモン、オレンジ、ナッツなど自然素材にこだわり、甘さ控えめで素朴な美味しさがある。「レイジーデイジーベーカリー」と名前もユニークで、ケーキ作りをイギリスの田舎で学んだと言う彼女もとても感じが良い。

湯島の生活

湯島の商店街を歩いて行くと清潔な感じの魚屋さんがある。店には旬の魚貝や焼き魚を売っていて、夫は楽しみにして前を通る。私の入院中は、そこの魚屋さんとすぐ側の玄米弁当屋さんに頼っていたらしい。今頃は鮎の塩焼きだろう。その近くには小さい本屋さんも有り、品揃えが私たち好みだった。最近はどこでもアニメなど漫画本主流に置いてあるが、そこは真面目な大人向きの本が多い。夫は社会派で、私は純文学の長編や外国の古典や現代文学が好きだ。用が無くても本屋さんに入り、背表紙を見ているだけで楽しい、インスピレーションも湧く。昔も今も待ち合わせは本屋さんでする。

美味しいお蕎麦屋さんも見つけた。夫はカレー以外にお寿司とお蕎麦も大好きだ。それ以外はあまり積極的ではなく、私に任せるという感じだ。そこのお蕎麦屋さんはホテルの一角に有り、駐車場も使えるのが便利でよく利用した。本格的な手打ち蕎麦屋さんなのに、いろいろなメニューが有り、お寿司もとんかつも定食も出している。飲食店が少ないので、いろいろ求められるのかも知れない。残念なことに湯島界隈では、他に美味しいお店に出会わなかった。

ここではスーパーが無いに等しいので、私たちはドンキホーテによく行った。ここは本当に何でもある。石焼き芋やお惣菜まで売っている。夫はこの手の人が多い安売り店が苦手で、普段は入らないのだが、ここは駐車場も有り、一緒に来てくれた

今日の横浜での散骨、明日の相模湾での散骨、今の季節、晴れて静かな海は最高だ。

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