お客様の声・風の声
2006年6月

2006/06/25 母の気持
2006/06/25 母なる海

2006年6月25日

母の気持

Hさんの散骨が行われたのは、もう4ヶ月も前のことだった。でも、未だに時々、Hさんのお母様のことを思い出さずにはいられない。

上品でお優しくご高齢のお母様は、元気でお過ごしだろうか。

Hさんから申込書が届いたのは、去年の12月の始めだった。書き込み欄に不備があり、お宅に電話をするとHさんがお出になった。

申込書には、1月初旬に散骨予定とあった。Hさんは癌で余命3ヶ月と宣告され、ご自身で申し込みをされたのだった。電話にHさんが出、本人の申し込みとしり、私はショックでそれ以上、何も言えず話を続けることができなかった。初対面の電話で、余命幾許の人に何が言えるだろうか。

それ以降、いろいろ心配で、奥様にお聞きしたいこともあったが、また本人が出たときにどうしていいか分からず、結局電話を掛けないまま年が明けた。

そして1月の半ばになり、奥様から散骨の依頼の電話があった。Hさんは本当に1月初旬にお亡くなりになっていた。

お宅にHさんのご遺骨をお預かりに伺ったとき、お母様もいらしていた。

もう、本人が決めたことだから、いいんです。全部散骨します。と、和やかにおっしゃるが、私は心配だった。Hさんの奥様も、彼が全部準備して逝ったので、ということだが、まだ心の整理はついていないご様子。

そして、Hさんのご遺骨は全部海に還された。

その次の日、奥様から電話があった。「ご遺骨を包んだ包みに付いていた、名前を書いた紙は残っていないでしょうか。」と。それらは水に溶ける紙で出来ているので、みな一緒に海に還ってしまう。やはりお母様は、息子さんのご遺骨に触れていた何かでもいいから、手元に置いておきたいとお思いになったのだ。

いろいろ考えて、処分する予定の骨壷がまだそのまま残っていたのを思い出し、ガーゼでその骨壷の内側をぬぐい、お渡しすることになった。

気丈に、しっかりとされていらしたが、自分よりも先に息子さんが逝ってしまったことは、本当にどれだけお辛かったことか。

今でも、全部を散骨されるかお聞きするとき、そのお母様のことがいつも思い出される。

▲上へ

2006年6月25日

母なる海

今年になって、法事代わりのメモリアルクルーズが、何組か続いている。

散骨から1年経って、同じ海に家族で集う。そんなご家族は、みな家族仲が良く絆も深い。そして、故人の意志であった散骨への理解も深い。

私達も、1年後に再会できることはこの上なくうれしい。皆さん1年元気に過ごして、また海に来てくださる。

前に、「故人のお蔭で皆で海に来れて良かった・・・」とおっしゃった方がいらしたが、本当に、つくづくそう思ってしまう。大自然、海、そんな非日常の世界で、波に揺れ、風と戯れる、そんな機会を与えられたということは、故人が期せずして与えたプレゼントかもしれない。

もちろん、船に弱い方にとって船に乗ることは、大変なことで、苦痛以外の何者でもないかも知れないが、船に乗らなくても海に来て欲しい。都会の生活から抜け出し、胸いっぱい海の空気を吸ってほしい。自然の中で地球という星を感じてほしい。

自然に還りたいという人々の願いの一部は、生きている人たちに少しは自然に還ってという警告もありそうだ。

▲上へ

 

目次

2021年06月
2021年04月
2020年08月
2020年07月
2018年12月
2018年11月
2018年10月
2018年06月
2018年05月
2018年02月
2018年01月

2017年12月
2017年11月
2017年10月
2017年09月
2017年04月
2017年03月

2016年07月
2016年05月
2016年04月
2016年01月

2015年12月
2015年07月
2015年06月
2015年04月
2015年02月

2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年09月
2014年08月
2014年07月
2014年06月
2014年05月
2014年03月
2014年01月

2013年06月

2012年11月
2012年10月
2012年09月
2012年06月
2012年05月
2012年02月
2012年01月

2011年12月
2011年10月
2011年09月
2011年07月
2011年06月
2011年05月
2011年04月
2011年03月
2011年02月
2011年01月

2010年12月
2010年04月
2010年02月

2009年10月
2009年09月
2009年08月
2009年07月
2009年06月
2009年03月
2009年02月

2008年11月
2008年10月
2008年09月
2008年08月
2008年06月
2008年05月
2008年03月
2008年02月

2007年12月
2007年11月
2007年10月
2007年08月
2007年07月
2007年06月
2007年05月
2007年03月
2007年02月

2006年12月
2006年11月
2006年09月
2006年08月
2006年06月
2006年05月
2006年02月
2006年01月

2005年12月
2005年11月
2005年10月
2005年09月
2005年08月
2005年07月
2005年06月
2005年05月
2005年04月
2005年03月
2005年01月

2004年12月
2004年11月
2004年10月
2004年09月
2004年08月
2004年07月
2004年06月
2004年05月
2004年04月
2004年03月
2004年02月
2004年01月

2003年12月
2003年11月
2003年10月
2003年09月
2003年08月
2003年07月
2003年06月
2003年05月
2003年04月
2003年03月
2003年02月
2003年01月

2002年12月
2002年11月
2002年10月
2002年09月
2002年08月
2002年07月
2002年06月
2002年05月
2002年04月
2002年03月
2002年02月
2002年01月