葬儀や散骨を巡る旅

変わってきた日本の葬儀事情や散骨の思い出も含め、連載で少しずつ紹介していきます。

01/26:カウンセリング 2 / カウンセラーの休日

カウンセラーの休日

また、渋谷に行った。マイナーな作品を演っている映画館は、渋谷に集まっている。今回観たのは「アニエスによるヴァルダ」、ドキュメンタリー映画である。
フランスの映画監督、彼女の作品「幸福(しあわせ)」を観たのはもう53年位前の事だった。全編モーツァルトの流れる印象派の絵のように美しい映画だ。冒頭に長閑な田園風景の中、小さな子供を連れて楽しげにピクニックに来る夫婦は絵に描いたように幸福そのものに見える。
しかしその後、旦那はある日、郵便局で窓口の美しい女性に会い、恋をしてしまう。何度か郵便局に通う夫の恋に気づき、妻は川に飛び込み自殺してしまう。男は亡骸を抱きしめ悲嘆にくれる。
そしてまた場面は変わる。最初と同じ風景が映る。幸せそうな家族のピクニックシーン。寸分たがわぬ映像。だが奥さんの顔だけが窓口の恋人の顔に変わっていた。モーツァルトの音楽がとても美しいエンディング。
この映画を17歳か18歳で観て、そのショック、その印象は、この年まで忘れ難かった。どの場面も覚えている。ほとんどセリフがなく、無駄を省いた演出に悲しい現実だと解釈していて、「幸福(しあわせ)」の意味が良くわからなかった。
しかし、今回彼女のドキュメンタリーを観終わって、突然分かった。この映画で特に多く触れられている訳ではないが、これだけ年を取って、50年経ってやっと理解したのだ。人の幸福とは、若さで憂いなく単純に喜びである物もあるが、そうではなく、一見同じように見える幸福の裏には、果てしない苦悩が隠れている物もあるのだと。
もっと年が行ってから観ていれば、きっとすぐに気が付いたであろう事が、読書でもある日、時が熟し理解する事があるのだと今更ながら思った次第だ。

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(2020/01/26)