葬儀や散骨を巡る旅

変わってきた日本の葬儀事情や散骨の思い出も含め、連載で少しずつ紹介していきます。

02/05:アメリカ村の猫たちとパコの散骨 2 / 大人気のパコ

5匹兄弟

パコは誇り高い猫で、自分を人間だと思っている。そして猫たちを馬鹿にしている。フーと怒って他の猫を近寄らせない。実に堂々としていて、しかも人間にはとてもフレンドリーだ。5匹兄弟のうち3匹は茶トラの雄猫、大ちゃんは一番大きく、優しい性格、パコは足が大きいが中位の体格で人懐こく憎々しい顔が愛らしい、小ちゃんは小さく性格も少しいじけていた。キジ白のクーパーは雌で実に態度が可愛いく誰からも好かれる仔だった。体がシャコタンで、ミニクーパーみたいということからクーパーになった。おちびちゃんはいつの間にかいなくなり、あまり覚えていない。

有名猫パコ

パコは特別扱いで、私たちの部屋で一緒に暮らし、他の猫たちは仕事部屋と庭を行き来していた。パコは見る見るうちに大きなデブ猫になったが、その存在はたちまち人気者になり、専属のカメラマンまで現れた。近所の日本人たちも「パコ元気?」と見に来る。今だったらどんなにテレビで売れた事か。長閑なアメリカ村では、車道もほとんど車が通らない。猫たちの天下だから堂々と車道で寝ている。パコは気が強く、雄猫に出会うと大きなうなり声をあげ、総毛立って空中戦が始まる。火花が散っている中、止めに入るとパコはイキがってもう少しで決着がついたのに、という感じで興奮しており、負けそうだった相手の猫は、しっぽを巻いて逃げていく。去勢をしても性格は変わらなかった。

パコの家出

アメリカ村は、入り口を入ると右のブロックと左のブロックに分かれている。私たちの家は左ブロックのやや奥、昭和記念公園になる予定の空き地の側だった。猫たちは、公園建設予定地のフェンスの破れ目から公園に行ったり、入り口から中央にある通りを越えて、右ブロックの方まで遊びに行ったり、かなり行動範囲が広かった。

ある時、何日もパコが帰って来ず、心配してアメリカ村の中を探していると、右ブロック中ほどの家のベランダで寛いでいるパコを見た。びっくりして呼びかけるとパコはすぐに寄って来た。そこの家は日系2世の兵隊さんの家で、タイガーと呼ばれ可愛がられていた。私たちは訳を話して家に連れ帰った。しかし家に着くと、あっという間にさっきの家に戻り、タイガーになってしまった。パコは有象無象の猫たちと暮らすのが嫌だった。1匹の方が良かったのだ。

それでもパコは、私たちが心底惚れ込んだかけがえのない存在で、取り戻さないわけには行かない。パコにとって居心地が良くなるように、部屋も廊下に仕切りをつくり、私たちの居住域はパコ専用で他の猫が入らないで寛げるように工夫をした。パコは人の心に沿える珍しい猫だ。いつも私を慰めてくれる。泣いていれば心配して「あなたの気持ちは分かりますよ」と、傍に来て慰めてくれる。本当の恋人のように優しいのだ。

猫エイズ

そのころワクチンはまだなく、たくさんの猫がエイズに感染していた。パコも例外ではない。それでも人間には移らず、他の猫には接触させないつもりだったので、世界一周のヨットの旅にも連れて行く事にしていた。しかし、今思えば、検疫でダメだったかも知れないが。パコはどんな乗り物にも物おじしないのでヨットに乗せ、2泊3日の清水へのクルージングに出た。清水には無寄港世界一周レースで優勝した多田雄幸さんを始め、外洋を志すヨットマンが多く、その親睦会があったのだ。 船の上でも船酔いせず、狭い空間を楽しんでいた。しかし、2日目になると具合が悪いのか、だるいらしく起きて来ない。食事もしない。ヨットは急遽引き返し、馴染みの先生の所へ行った。

(2020/02/05)