葬儀や散骨を巡る旅

変わってきた日本の葬儀事情や散骨の思い出も含め、連載で少しずつ紹介していきます。

葬儀いろいろ 5 / アメリカの火葬、散骨

アメリカの火葬

アメリカの火葬は実に簡単である。ビューイングが済んだ遺体は、足の指に名前とナンバーの札を付け、スチールの棺に入れられて冷蔵庫へ納められる。冷蔵庫に集まった遺体は、トラックで工場のような火葬場へ運ばれる。
そこでスチールの棺から出し、段ボールの棺で火葬炉に入れられる。火葬に際しては、遺族も友だちも葬儀ディレクターも立ち会わない。すべて火葬スタッフにお任せだ。関係者が居ないだけに、スタッフも当たり前の日常の作業として行っている。
火葬炉は、天然ガスが使われ1300℃位で燃やされ、短時間で灰状になって出てくる。日本の場合は、骨の形が残るように1000℃以下で行われている。遺灰は、細かい物はバキュームで集め、少し形がある物はグラインダーに掛けられて両方を合わせ、金属製の骨壺に収められる。そして小包で個々の遺族に送られる。
骨壺は、壁式墓地に納められることが多いが、一般の墓地にも納められるし、家に置いておく人もいる。
私たちが火葬場に見学に行った時、ガンで亡くなった方の放射能について、放射線の値を調べるという人たちに行き会った。これは火葬場従業員組合の要請だという。

アメリカに住む友人でゲイの日本人がいる。その彼の友だちがエイズで亡くなった時、皆は感染を心配して火葬にした。遅れてアメリカに着いたイタリア人の母親は、驚愕し、激怒した。「なんていうことなの、身体がない!これじゃ天国へ行っても復活するとき、身体が無いなんてどうなるの!」彼女は泣く泣く骨壺を立派な棺に入れ、お墓を作った。

アメリカの散骨

アメリカでは、州によって葬儀の法律も少しずつ違うから、散骨が出来ない州もあった。海でもかつては、海岸から3マイル以上離れるなど規制があったが、今はかなり自由である。カリフォルニアでは、好きな海岸に撒いたり、ゴールデンゲイトブリッジから撒いたり、自分の農場や家の庭に撒く人もいる。水葬も可能になったという話も聞くが、実際は分からない。
 私たちのゲイの友人の別の友だちは、ニューヨーク州の馴染みの川に行き、皆で紫陽花の花と一緒に流したと言う話を聞いた。「それは綺麗だったわよ」と言う。残念ながら、日本では川での散骨は認められていない。

散骨が出て来る映画

日本では、本格的に散骨を扱った高倉健主演の映画「あなたへ」が有ったが、散骨に関するアメリカ映画を3つ。どれももう古く短い場面だが、一つはジュリエット・ビノシュ、ジョニー・ディップが出た映画「ショコラ」。
こちらは、とても綺麗なファンタジックな愛の話で、古い村をチョコレートで変えて行く主人公が窓から遺灰を外の通りへ撒くシーンある。
もう一つも同じラッセ・ハルストレス監督がE・アニー・ブルーの小説「シッピング・ニュース」を映画化した、冒頭のえげつない(・・・・・)散骨シーン。ショックだ。自分をレイプした兄の遺灰をトイレ(水洗ではない)に撒くというより捨てるシーン。死んでからも何が起きるか分からない。
そして、忘れてならないのは「マジソン郡の橋」。橋から母親と恋人の遺灰を撒くシーン。秘めた恋には散骨が必然的な感だった。

つづく

(2020/01/21)