葬儀や散骨を巡る旅

変わってきた日本の葬儀事情や散骨の思い出も含め、連載で少しずつ紹介していきます。

01/30:葬儀いろいろ 6 / アメリカの土葬

アメリカの土葬

アメリカ映画でも埋葬のシーンは多い。20人位の喪服の近親者が墓地に集まり、棺が墓穴に納められるのを見送っている。広々とした芝生の背景には、十字架の墓石などが点々と見える。一般的には、そんな感じだ。
私たちは、墓地を見学していて、ちょうど新しく作っている場に出くわした。シャベルカーで土を掘り返し、それはかなり深く、広いので盛り上がる土の量も多い。そこで作業の人たちに埋葬法を聞くと、長方形に削られた穴に豪華な棺がそのまま置かれ、その上にボールト(コンクリートで作られたトンネルのような形の蔽い)がすっぽりと被せられ、その上に土を被せ、墓石を乗せる。かつては、ボールトなど無く土にそのまま埋めたそうだが、水害で土中から棺が流出したり、墓荒らしや遺体泥棒もいて、コンクリートのボールトが作られるようになった。ボールトには持ち上げられる様に金属の取っ手も付いている。墓によっては、夫婦で上下に入るように深く作られている物もある。「私は今までいつも下だったから、今度は私が上よ」とジョークを飛ばす奥さんもいたと言う。

19世紀の頃には、医学生のための解剖用の遺体が足りなくて、墓泥棒が遺体も売っていたそうだ。南北戦争の頃には、戦場で遺体から歯を盗み、入れ歯用に売っていたという話もある。
 エンバーミングされた遺体は、かなり保存できるようで、良くできた物は、半永久的(ミイラ化)とか70年は大丈夫という。

「生まれてくる時は、自分の意見は言えなかったから、死ぬ時ぐらい、好きな様にしてほしい」とピンクのキャデラックを棺にして、その車ごと埋葬された人もいる。逆に「葬儀にはお金を掛けないでいいから、お金は生きている人のために使って」という人も合理的なアメリカ人には多い。日本もそういう傾向になって来た。

土葬でも、ニューオリンズなどは、ヨーロッパ的な小さな建造物のお墓(映画「イージーライダー」に出て来る)が多く、洪水の時に随分流されたらしい。ニューオリンズの壁式墓地は、ある程度年数が経つと、遺骨を前から押して崩して取り出し、新しい遺体を入れるという事だ。

しかし、埋葬型の墓の敷地は、転売できるので、夫婦で並んで購入していても、離婚や引越し、投機で売りに出される。将来どこに住むか分からないし、値上がりもするからとニューヨーク郊外に1つ、フロリダに1つ、ハワイに1つ持っている人にも会った。アメリカは広いが、大都市に近い墓地は限られているので、土地のように値も上がるのだ。

マンハッタンのダウンタウンの高層ビルの日陰にひっそりと小さな墓地がある。そこには黄熱病が流行った時に亡くなった子供たちのお墓がいくつもあった。アメリカの子供のお墓は、エンゼルだったり、ハートだったり、小さく可愛い物が多い。そこには親の悲しみがいっぱい詰まっている。

(2020/01/30)