葬儀や散骨を巡る旅

変わってきた日本の葬儀事情や散骨の思い出も含め、連載で少しずつ紹介していきます。

02/03:アメリカ村の猫たちとパコの散骨 1 / プロローグ

アメリカ村に住む

私たちは40年位前、立川のアメリカ村に住んでいた。そこは昭和記念公園の隣の一角で、緑の芝生の上に、ゆったりとした広さで戸建て米軍ハウスが立っている。屋根付きガレージがあり、2LDKと3LDKがあった。作りは粗末だが贅沢な空間で、私は大好きだった。今は大分縮小されてしまって、家も建て直されたりしているが、私が居た頃は、戦後すぐに建てられたままの古い家だった。

前は空き家で後ろも左隣りも横田基地に務める空軍の兵隊さんだった。アメリカ人の身長に合わせて、キッチンの高さは高く、お風呂場も4畳位の広さでトイレも洋式、洗濯機も置けた。貧しかった私たちには、夢のようなお城で、家賃はそれまでの倍近くになったが、デザインの仕事場兼なので思い切って借りた。それだけにちゃんと仕事を増やさなければと身が引き締まった。

子猫ゾロゾロ

引っ越して来た時に猫を7匹連れて来ていたが、広い芝生や、庭のマテバシイの木は、格好の遊び場であった。家の前は、一車線の舗装道路、裏は芝生で後ろの家に続いている。我が家のキッチンの窓からは、裏の若い奥さんが、ビキニで、折り畳み椅子に寝そべり、身体を陽に焼いているのが見えた。どうやら妊娠しているらしい。裏の家でも猫を飼っていて、その猫が子供を5匹産んだ。その猫たちは、乳離れするといつも4匹が家に遊びに来た。茶トラの大ちゃん、小ちゃん、キジトラでお腹が白いクーパー、そしてクーパーに付いてくるおちびちゃん。みんな可愛くて勝手に名前を付け、来るのは大歓迎だった。

そのうち、裏の家は赤ちゃんも生まれ、横田のベースの中に引っ越してしまった。4匹は置いて行かれた。

新しい友だち

そして前の家には、新しく日本に来た若い通信兵のフレディが越してきた。彼とはすぐに仲良くなり、一緒にバーベキュー等をしたり、ベースの中に連れて行ってもらったりした。そんなある日、彼は日本の女の子を連れて来て、ディスコで知り合った由美子さんだという。新潟出身で銀行員の彼女は、あっという間に彼と結婚してしまった。彼は20歳、彼女は19歳である。一緒にディスコでWデートした互いの親友通しも結婚して、なぜか両方共創価学会に入った。大きな声でお経を挙げるのは気持ちいいし、それでラッキーになるならいいじゃないと、大きな仏壇も買った。

パコ登場

彼らもベースに引っ越しが決まったが、ある日フレディは茶トラの子猫を載せてバイクで走って来た。私たちは猫がバイクに乗っている事にびっくりし、また肝の据わったその面魂の猫にすっかり魅せられてしまった。パコというその子猫は、置いて行かれた猫たちの兄弟で、彼がティムさんから貰ったのだという。私たちはどうしても欲しいと頼み、フレディも由美子さんも了承してくれ、パコはうちの猫になった。

(2020/02/03)