葬儀や散骨を巡る旅

変わってきた日本の葬儀事情や散骨の思い出も含め、連載で少しずつ紹介していきます。

02/06:アメリカ村の猫たちとパコの散骨 3 / アメリカ村の事 1

アメリカ村の住人

アメリカ村は今も在り、日本人で住んでいるのは、45年前位から住み続けている人達とアメリカ兵の奥さん、軍属だけである。そして規模も小さくなり、私たちが住んでいた左ブロックは大きな老人ホームが建ち、家はほとんど無くなってしまった。
大家さんは大手スーパーで、私たちが住んで居たころ、病院を作るとかで、立ち退き問題が起きたのだ。その頃は、マイク真木さんや井上陽水の編曲で有名な星勝さんもいて、カメラマンやデザイナー、コピーライター、フランス帰りの画家、切り絵アーチストなどフリーランスや自営業の人などが多く住んでいた。私たちはそれを機に団結して反対運動を起こした。ほとんどが学生運動世代で、立ち退き反対は徹底的で、村人通しの交流も盛り上がった。

野鳥と猫

東京近郊で、このような素敵な場所は他に知らない。管理事務所がしっかりしていて、家の周りは必ずきれいにして、芝生も伸びすぎないように決められていたから、環境は素晴らしかった。野鳥も多く、尾長やカッコウもやって来て、モグラなどもいた。時々、クーパーは褒められると思ってネズミをお土産に持って来た。
猫たちは鳥を見ては興奮して、腰を低く構え尻尾を振り、ハンターのポーズを決めていた。ある時など、尾長を捕まえた猫が、尾長の仲間たちに狙われ、車の下に潜り込んで隠れていた。尾長はカラスの仲間で頭が良く、どの猫かしっかり覚えていて、しつこく追い回し、するどい口ばしでつっつこうと庭の上を10匹位が飛び回っていた。車の下の猫は、夜になってやっと解放されたが、何日かは狙われていたようだ。

我が家の猫たち

アメリカ村では、都合100匹以上の猫を飼ったことになる。常時30匹位がいたので猫屋敷とも呼ばれ、有名だったらしく、家の前には6匹の子猫が入っていた段ボールが置かれたり、人から聞いて来て持ち込まれたりはしょっちゅうだった。散歩の途中にも捨て猫に出会ってしまう。映画館の行列に並んでいる時にも拾った。勿論猫は好きだが、何としても譲れないのは、お腹を空かして、生きる望みがない生き物を放っておくことだ。アフリカで大勢の子が餓死していた時は、本当に居たたまれなかった。すべてを救える力はなくても、目の前で出会った困っている物(人)は出来る限り救いたい、それが私の信念だ。
何とか子猫の貰い手を見つけると共に去勢や避妊手術は、獣医さんに半額でお願いするようになった。ブランド物の猫などは1匹もいなくて、今のような猫ブームでもなく雑種はなかなか貰い手がなかった。一見ブランド猫の様に見える長毛種の子猫は本当に特別に可愛くて、同じ村の手芸家が貰ってくれてチャーリーになった。

猫の名前

最初の頃は、猫の名前も思いつくまま気ままに付けていた。友だちには悪かったが、シロ、おふみ、タカオ等と付けては、悪さをした時に怒るのに気が引けた。近所の可愛い子の名前でラーニー、バイトの子の名前を取ったアーちゃん、ミュージカルからアニーちゃん、流行っていた歌からコウタロー、そのうち木のシリーズで欅、桃、杏、おでんシリーズでがんも、ちくわ、有名人からテツコ、他に風君と波ちゃん、いか太郎、ポラン、ノエル、5千円札とメロンが付いて来た新渡戸メロンなどなど。

人気の2匹

印象深いのは、半年位で早死にしてしまったいか太郎。白い部分が多い茶のぶち猫で、尻尾が短くて太く、手足も短くて可愛い。いつもプリプリ怒っているような態度で人懐こい。ポランもアメリカ兵に置いてかれてしまった猫で、そんなことはお構いなしという感じで我が家に居座り、そのチャランポランさからポランになった。この猫ほど尻尾がない猫は見たことがない。本当に全然ないのだ。小太りで茶と白のトラ猫だが、人に何をされても全然気にしない。のんびりしていて、いつもゴロンと白いお腹を見せる正に癒し系猫。この子はどんな環境で、だれが居ても気にしないので、テレビや映画のタレント猫にピッタリだ。両方とも雄猫である。捨てられていた猫は、みんな愛に飢えていて人懐こい子が多い。

スタッフ

アメリカ村でデザイン事務所を始めてから、スタッフも少しずつ増えた。 ほとんどは近隣からバイクや車で通える若い女の子や美大の学生のアルバイトで、募集広告には「猫と一緒に働きませんか」や「猫好きの人」なので、みんな猫と遊びながら仕事をしていた。中には、高田の馬場から電車とバスで通ってくる女の子もいて、その子は新しく来た猫に新選組の井上源三郎から名前を取ってゲンちゃんと付け可愛がっていた。彼女は仕事帰りに日野駅にわざわざ行って土方歳三を偲んでいた。コピー機の上は、暖かいので猫の寝床、どこを見ても猫だらけ。原稿も猫の足跡が付いたりして、会社の名刺のシンボルもコウタローの足型を使った。コウタローは右前足が関節から曲がっていて、近所のスーパーの前で見つけた猫である。そしてついに猫のためにお掃除のお手伝いさんを頼むはめになった。

(2020/02/06)