葬儀や散骨を巡る旅

変わってきた日本の葬儀事情や散骨の思い出も含め、連載で少しずつ紹介していきます。

03/04:カリフォルニアを訪ねて / 葬儀大学取材 1

散骨のきっかけに

1998年2月、私と周治くんは、ロサンゼルスの南にある葬儀専科のあるサイプレスカレッジを、欧米の葬儀事情取材のために訪れました。周治くんは、ニューヨークのジャパニーズレストランでアルバイトをしていて、その時に、うちで通訳など助手として働く事になった若者です。彼は高知から一旗揚げようとアメリカに来て、いろいろと苦労しているところでした。
今回の取材でロンポックの宇宙葬とサイプレスカレッジを取材した事は、後に散骨を始める事の大きなきっかけになりました。

サイプレスカレッジ

ノースオレンジ郡のサイプレスに在るこの大学は、芝生や灌木に囲まれた美しい環境で、葬儀関連の学科だけではなく、総合短期大学として、地域に根差したカレッジです。
そこでまず、健康科学科・葬儀コース、復元学のスタウト主任教授に話を伺いました。彼は28年間医師として働き、その後このカレッジの教授になったのですが、地域への貢献を担っているこの学校の教員生活にとても誇りを持っていました。

ハリウッドの技術

アメリカ国内には、500を超える葬儀関連の学校が有り、ほとんどが同じカリキュラムに沿って授業を進めているらしいのですが、ここでは独自に、顔や体の復元学とエアーブラシによる死に化粧の技術に力を入れているという事でした。従来のブラシを使った技法も教えているそうですが、映画の特殊メイクの技法を取り入れたエアーブラシを主流とし、ハリウッドの映画業界から派遣された先生も多くいるという事です。

ここ数年の傾向

この学科の学生は、従来、男女比が半々でしたが、このところ女性が70%近くになっているそうです。スタウト教授曰く、女性の方がよく気が付くし、同情心もあり、これが成功のポイントになっているということです。そして、心理カウンセラー、復元術、コスメティックワーク、フラワーアレンジメントなどは、一般的に男性より繊細で素晴らしい葬儀ディテクターになる可能性を感じているとのこと。
また、ロサンゼルス近郊では、中国語、韓国語、日本語を話す人材が求められているらしいです。

卒業後の進路

卒業後は、2年間の実務経験が求められますが、カリフォルニア州では、入学前でも構わないそうで、その後、州の試験があります。それとは別に、エンバーマーになる人、葬儀ディレクターになる人、全米で働くには、更なる試験があります。
州の法律はしばしば変わるので、ディレクターの試験は難しくなる傾向にあり、さらに心理カウンセラーとしての資質が求められています。エンバーマーには、医師に準じた公衆衛生や彫刻家に似た美的センス、工芸技術が必要です。
そして、卒業生のほとんどは葬儀ディレクターやエンバーマーになり、実家の葬儀社で働いたり、地元の葬儀社に務めたりします。しかし、州や郡政府の検視官のアシスタントや捜査官になる人もいます。また、取得した単位を利用して、4年生大学や大学院に進む人もいます。
このカレッジの前身の学校を卒業し、日本、オーストラリア、ニュージーランドで事業を展開している人もいて、その人は阪神淡路大震災の優れたレポートを書いているという事でした。

次回は、カレッジのポリシーとカリキュラムについて書きます。

(2020/03/04)