癌ステージⅣを5年生きて 60

散骨の風ディレクター KYOKO

私は死なない

私は今日、別の病院に行った。今まで掛かっていた消化器内科の先生が変わり、2時間待たされたあげく、「もう往診にしたらどうですか」と言われ、転院にしたのだ。前の病院はとても混んでいて、新しい先生は、私に関わっている暇は無いと言いたげだった。それで紹介状を書いてもらい、将来入るかも知れないホスピスのある病院に変えた。

初診だから待たされると思ったが、そうでも無かった。担当は、白髪の優しそうな先生で安心した。私が今までの病気の経過を話し、「本当はもう死んでいるはず何ですよね」と、言うと「そんなことは有りません。生きている人はいくらでもいます。10年ぐらい生きる人だって」と言う。「そうですか」と言ったものの私は複雑だった。そして検査をしてもらった。血液・尿検査、レントゲン、CTである。最近新しい先生に代わってから、検査をしてくれないので、私は自分の内臓を知りたかった。どれくらい悪くなっているんだろう。今までどこの病院でもCTの予約には時間が掛かり、早くても2週間後と言われた。ところがここでは、すぐ出来るという。1日で、それも結果待ちを入れても1時間位の間に全て終わるのだ。なんて簡単なのだろう。結果は、泌尿器科から帰って来た夫も一緒に聞いた。肺の画像は、1年前の物に比べて右肺の下の癌がかなり大きくなっていた。血液検査では、肝臓の数値が少し高めだった。だからと言って私の場合は、特に問題にならない。私は、「死なないんですよねぇ」と呟いた。すると先生が「死にません」と言う。何が根拠か分からないが、とりあえず、私が元気で、太っているし、ご飯も食べているからだろう。夫も「死なないですよねぇ」と言う。再び先生「死にません」と言う。夫は「ほら、見ろ、死なないよ」と言いたげである。とにかく直ぐではなさそうだ。今までの若い先生は、大抵「1カ月後の死はあり得ます」と言った。私は死ぬのを諦めなければいけないのか。10年も生きるなんてとんでもない。夫より長生きしたら、それこそ困る。やっと楽できると思ったのに。やれやれ、まだまだ仕事は続く。生きるとなったら痩せなきゃならない、今持っている服が着られない。

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