癌ステージⅣを5年生きて 82

散骨の風ディレクター KYOKO

SORAの場所

SORAが膀胱炎になった事は書いた。注射をして貰って治ったと思っていた。痛みが無くなり、オシッコも一応出る。でも、残尿感が有るようで、トイレを出たり入ったりする。次の日は日曜で獣医さんがお休みなので、様子を見ることにした。

獣医さんから帰って来た時、病院臭いので、他の猫に敬遠されたが、体も綺麗にし、普通になったのにSORAの方が警戒し、ベッドの下の隅に行ってしまう。私が這って入っても難しい位置にいる。そのうち、SORAの体がオシッコ臭くなって来た。普通のオシッコ臭ほどひどく無いが、やはり臭う。抱っこすると匂いが移るので、バスタオルに包んで抱く。私への信頼は回復しているが、一緒に寝ようとしない。

SORAの居ないベッドの上は、SORAの場所を、ゾウさんが奪い、ゾウさんが動くとシグちゃんが居座る。夜寝ていると、私の腕の中にシグちゃんが忍び込んで来た。でもすぐに、それは不味(まず)いかと思い直し、私の腕の外側に位置を変えた。シグちゃんだって同じに可愛がってあげたい。でも、猫の世界も難しいのだ。最近、シグちゃんは夫に急接近。脇腹に乗ったり、並んで寝たり、夫は私の代わりに補ってくれている。

猫のうつ病

私は解って来た、SORAの病気が。やはりストレスによる膀胱炎だったのだ。私も若い頃、膀胱炎になった事がある。だから細菌が原因で、精神的な事でなるとは思っていなかった。しかし、獣医さんはそう言っていた「ストレスでなる事も有ります」と。その時私は、ストレスはシグちゃんの存在だけで、彼女とは17年も一緒にいるし、いじめられるようになってからも4年以上経つから、それが原因とは思えなかった。でも先生は言った「年を取るとストレスを感じ易くなる」。それなのに私は、SORAの事を分かってあげていなかった。

先日、ベッドの上に抜けた猫の毛が少し多くあった。その時、シグちゃんがSORAをいじめたなと思った。でも時々ある事で、それが引き金になったとは、思ってもいなかった。猫にもうつ病があるのは何となく知っていたが、まさかSORAがと思った。それで次の日、月曜日は午前中様子を見て、獣医さんに電話をした。「やはり、ストレスで、うつだと思います」、先生は薬を出してくれるというので午後から貰いに行った。できれば尿を採って来てと言われたが、1滴しか採れなかった。でも、匂いが無く色もなければ無くても良いと。尿はスポンジなどに含ませて採り、それを絞ってスポイトなどに入れる。私もそれは知らなかった。

その日、獣医さんは暇そうだった。先生は「粉薬でもいいですか」というので「構いません」と答えた。猫の薬は基本的に人間と同じなので、体重に合わせて調節する。SORAの場合、1錠の6分の1なので、粉にしたのである。ほんの微量だった。粉ならかえってあげやすい。チュールに混ぜれば絶対に食べると思っていた。微量の水に混ぜ、スポイトで飲ませるのも難しくない。家に帰って早速やった。予想通りSORAは3分の1のチュールに混ぜた薬を綺麗に食べた。残りのチュールはゾウさんとシグちゃんにあげる。みんなこれが好きだが、栄養価も高いし、おやつでしか無いから少しでも喜ぶ。

薬の効き目

驚くことに薬はすぐ効いた。1時間にもならないのにSORAの態度が違う。あまりオドオドしていない。トイレに行く様子も少し変わった。体を拭いてベッドに上げて、一緒に横になれば少しは居る。だが、まだ最終的にはベッドの下に行ってしまう。でも、丸1日でほぼ完全に元に戻った。必要以上に体を舐める事も減っていた。それもアレルギーだと思っていたが、ストレスだったのだ。私は猫の気持ちに通じていると思っていたのに、脳の事は全然分からなかった。人間と同じ薬、猫の頭の中も私と同じだった。脳のメカニズムの不思議さは、人間でも解明できていない部分もあると思うが、一寸の虫にも五分の魂どころの話ではない。つくづく勉強不足を実感し、驚きもした。

薬は10日分ある。毎日飲ませるのだが、これはずっと続けるのだろう。ここ何日か、SORAの行動を見守るのに手いっぱいで、ゾウさんもシグちゃんも構ってあげられなかった。ゾウさんは寂しそうな顔をして私を見る。そして、事務机の下、私の足の所で構ってくれるのを待っている。そんなゾウさんをシグちゃんが、慰めて顔を優しく舐めてあげていた。SORAもやっとベッドの元のポジションに自分から行くようになった。彼女が寝ている間に私は、思い切りゾウさんを抱きしめる。

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