癌ステージⅣを5年生きて 83

散骨の風ディレクター KYOKO

恐るべき近世の生活

7月14日はパリ祭、フランス革命の起こった日だ。1789年これは未だに覚えて居る歴史年表の中の1つだ。後は、538年仏教伝来、1600年関ヶ原の戦い。およそその3つで、いろいろ割り出す事が多い。

最近読んだ3つの本には、16世紀~18世紀位までのフランス、イギリスの想像を絶する生活が、最高から最低まで出て来る。日本でもその時代、決して全てが豊かとは言えないが、西洋よりはまだましな気がする。どこの国でも極貧は極貧で限度がないが、その分、上の者の贅沢もキリがない。ロシアの宮殿や宝飾品の贅沢さは、やはり世界一ではないか。革命が起こって当然である。そして、イギリス、フランスの当時の不潔さ。ローマ時代の秩序はどうしてしまったのだろう。ベルサイユ宮殿の中も外も糞尿だらけ。王様はそれを気にしていない。シラミがいるのも普通だ。小さな子供にもブランデーやワインを飲ませていて当たり前。イギリスでは赤ちゃんをジンで寝かせる。宮廷の女官たちは、素晴らしいドレスを着て、自分の部屋に帰るまで、パーティ用の庭に設置した屋台から出るごみと糞尿とぬかるみを避けて歩き、中に入っても、階段はトイレと化し、壁側は尿、踊り場は糞、そして漂うそれらと酒の臭気。あのドレスで、どうやってそこを歩いたのだろうと思う。水には浸かっていたが、お風呂もお湯は病気が移ると言って入らなかった。それに部屋の中に無数の猿を飼い、たくさんのインコを集め、トラなどの猛獣も飼っていた。だから、香水の量も凄かったようだ。

イギリスの罪人

イギリスでは、働き盛りの男が家から誘拐(さら)われ、船員として船に乗せられた。犯罪が横行し、絹のハンカチ1枚盗んでも死刑の判決が下され、減刑されてもオーストラリアへの流刑になる。囚人は皆たいした罪は犯していないが、犯罪者がとにかく多く、罪を重くしていたのだ。イギリスからオーストラリアまで船で8カ月位掛かり、ほとんどの罪人が船倉に足かせをして詰め込まれる。ここも糞尿と嘔吐物の匂いで窓がないから、よどんだ空気の中1畳分のスペースに4人寝かされる。水も食料も足りなくなる。着る物もボロボロで、ノミ、シラミ、南京虫、ねずみの数も凄い。荒れる海を走って着いた土地は、アボリジニが住み、槍の攻撃が待っている。女囚はそんな船の中でも子供を産む。着る物は麻袋しかない。

教育と人

確かにその頃も日々進歩はしている。でも、フランスには議会が無いから、王様のやりたい放題だ。18世紀のフランス革命も当然と言わざるを得ないが、その発端となったバスティユにサド侯爵が居たのは前に書いたと思う。その頃、ギロチンでさえ斧からの素晴らしい発明品で進歩だった。それが私の若い頃まで、使われていたのも驚きだ。その頃の映画で、現代劇なのにアラン・ドロンがギロチンに掛けられるのが非常にショックだった。それはギロチン反対の意も込めて作られたらしい。

以上は、周知の人も多いと思うが、私はリアルにその事を感じて今書いた。ここで言う進歩とは、水道の普及や電気、電話、交通手段等ではなく、人間の教育によるレベルアップだ。確かに位の高い人は高等教育を受けていた。そして宗教による倫理もあったが、高邁な哲学を持たない王様には、自分中心主義が働いていた。それでも戦争に勝つうちは民衆も我慢した。

現代の人

そして今、人間はレベルアップしただろうか。AIが進み、プログラミングすれば、人は頭を使わなくても物事は動く。計算機があるから、暗算しない。スマホがあるから友達の電話番号も覚えていない。漢字も勝手に変換してくれる。皆、楽な方に流れるのは、当然の事だが、古い文化的財産が押しやられている事には我慢できない。クラシック音楽、文学以外に関しては良く分からないのだが。例えば、私がドストエフスキーを読んでいたとしよう。若い人で、一流大学出ではない人は、「何ですか、それ」「音楽家ですか」と言う感じだ。私は未だにその辺、19世紀から20世紀の物を愛読している。読み漏らしている物を補い読むのが楽しい。10代後半から少し前に至るまで、読書に避ける時間が少なかった。だからヨットで太平洋に出た時、1日中本を読めるのが一番の魅力だった。買い貯めていた本を積めるだけ積んだ。

私は私

私はいつも軽佻浮薄の逆を行く。時代に合わなくてもいい。ある人は、現代人は段々猿に近くなっていると言う。恵まれた時代、でも未来は決して明るくない。限られた時間、人は何を目指しているのだろう。

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