風の中の私 3

──やっぱり懲りない書く事は──

命の不思議、時雨ちゃん

もう、駄目かもと思った時雨ちゃんが、一命を取り止め退院しました。でも、先生は長くないだろうと言いますが、思いのほか元気です。鼻から管を入れエリザベスカラーをして、流動食を入れるようになっていますが、帆立のお刺身を2個分、チュールを1本半、サーモンのペーストも小皿で食べ、食欲は旺盛なのです。一応その分を引いて流動食も入れましたが。口の中が歯槽膿漏で、噛みにくそうですが、元気な時より貪欲に食べます。
ゾウさんは時雨ちゃんを見て、「ハァー」と凄い剣幕で怒ります。SORAが退院したときもそうでしたが、病院の匂いが嫌なのです。今度は、襟巻トカゲみたいなエリザベスカラーまでしているので一層です。時雨ちゃんは、帰ってから夫にべったり、ゾウさんとSORAは私のベッドに居て、あまり会わないようにしています。

時雨ちゃんは、次の日も帆立を食べ、チュールやスープ食もよく食べて、3日目には鰯1匹をお刺身にしたら、綺麗に食べました。そして爪まで研ぎ、夫のお腹の上に乗り元気でした。
ところが次の朝起きると元気が有りません。そしてトイレに行き、ウンチをやっと少ししたかと思うと、吐きたそうです。吐く物はないようなのに気持ち悪そうです。しかし、硬いウンチが出て、柔らかめの排せつ物が沢山でたので、少し安心しました。でも腎臓系の数値が計量系を振り切り、リンの値も高く、数値はいつ死んでもおかしくなかったのは事実です。前の日に先生に電話して元気ですよといったのに、あれは最後の輝きだったのでしょうか。うちに帰って来て、甘え、好きな物をお腹いっぱい食べ、幸せだったと思います。もう、これ以上延命はしない方が良いと決め、流動食は止めました。その夜は、自分の子供の命のように苦しみました。ただ、看ているだけでいるのは、なんて辛い事でしょう。

ところが次の日、また持ち直したのです。お腹が空いていると言う感じで、何か食べたそうなのです。それでチュールを上げると全部では有りませんが食べました。生きようとしています。お水も飲みます。ただ、口内炎が痛いので、たくさんは食べません。それで、流動食を再開しました。目ヤニもひどく顔が汚くなって、温かいタオルで拭いて上げても鼻の管が邪魔であまり綺麗になりません。トイレにも自分で行きます。
今日は、マグロと帆立のお刺身を買って来て、マグロ1切れをタタキにして上げると2口食べました。でも口の中が良く無くて、上手く食べられないようで、缶詰のスープに変えましたが、飲めませんでした。鼻からの流動食以外はダメですね。ほとんど寝たきりですが、意識はハッキリしています。撫でて上げれば嬉しいようです。生命力、命とは、本当に最後の最後まで生きようとするものなのですね。こんな事は初めてです。

松輪漁港の岩壁の洞窟から、呼ぶと、ビーと鳴いて駆けて来た、お腹を空かせていたシグちゃんを保護したのが、昨日の事のようです。あの時も捨てられたシグちゃんは必至で生きていました。18年、長い付き合いでした、人間の子供でも1人前の年です。方や順調に回復している19歳のSORA、命は本当に不思議です。私自身、こんなに生かされているのですから。一転二転、シグちゃんの命ある限り付き合おうと思っています。

前の記事次回に続く