癌ステージⅣを5年生きて 19

散骨の風ディレクター KYOKO

運の良い私

私たちは次の日、小豆島の平井クリニックに報告と相談をしに行った。先生は、私を老人ホームで働かせてしまった事を済まなそうにしていた。どちらにしても抗がん剤以外の選択肢は無いのだ、生きるには。それでも友だちの中には、「抗がん剤は絶対やるな」と完璧に否定する人も居た。そんな時、クリニックの待合室で偶然に、「癌を寛解させる医者」を特集している『文藝春秋』を見つけた。私たちは夢中でその記事を読み、帰りにその雑誌を買って帰った。その内容は、一縷の希望を持たせてくれる物であり、藁をも縋(すが)ると言う感じでは無かった。ネットなどでいろいろと癌について調べても良い情報はなかったのに、運が味方してくれていると思った。

京都の名医

早速、京都の「からすま和田クリニック」に予約を入れた。意外にも予約は簡単に早く取れた。セカンドオピニオンという事で、県立中央病院からCDと診断書を書いて貰う。そして指定日の早朝、島の反対側にある福田港から姫路までフェリーに乗り、バスで姫路駅まで行き、京都駅へ快速電車で、そして地下鉄に乗り御池駅下車烏丸通りのクリニックに着いた。ここの院長和田先生は、30年以上京大病院呼吸器外科にいらした方で、食事療法を中心に癌を生かさない研究をされ、医学界では、異端なのかも知れないが、その方法で何人もの癌患者を寛解させた方である。私は先生から直接、CD画像を見ながらの丁寧な診察を受けた。温和で真剣に対処して下さる先生に、この方なら任せられる、大丈夫と安心も出来た。そして抗がん剤をしながら、食事は玄米、肉と乳製品はダメ、野菜や豆類中心に梅エキスと重曹を飲む事になった。

久しぶりの京都も楽しく、マクロビ食堂で食事をし、錦市場や歩きながらのウィンドショッピングに心が弾んだ。

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