風の中の私 21

──やっぱり懲りない書く事は──

ニューヨークのレストラン

ニューヨークでは、いろいろな場所に行き、たくさんのレストランに入りました。最高だったのは、やはり、ニューヨークで一番美味しいと言われ、予約が半年先まで取れないというフレンチ「ヴーレ―」です。運よくキャンセルが出て、夜の9時過ぎと言う時間でしたが勿論行きました。アミューズ、オードブル、そしてスープ、メイン2種、デザートも2種にコーヒーです。何を食べたのか、いくら払ったのかは覚えていませんが、とにかく全てが味わった事のない美味しさでした。勿論、ワインも料理に良く合っていました。2皿目のデザートはお腹がいっぱいな事も有り、クッキーだったので持って帰りました。もう、感動の嵐、雲の上に乗ったような夢見心地の気分で、この世で最も贅沢を味わっていると感じました。お店は広いのですが、雰囲気はシックで、それ程他のお客さんが気には為りませんでした。全体にレストランの照明は暗いですね。それにウェイターのサービスも良かったからでしょう。

それと大違いなのは、日比谷にあるフレンチレストラン「アピシウス」です。私の誕生日に予約していったそのレストランは、有名絵画が飾ってある事でも知られているようですが、テーブルとテーブルの感覚が狭く、慇懃なだけのウェイターは、会社のお金で接待をしている常連さんには媚びても、自腹で10万円も払った私たち一見さんには、冷たいものでした。味も感動する程では有りません。「ヴーレ―」にはもう1度行きたいと思いましたが、その後改装するために休業になり、オープンしたという噂が聞こえて来ませんでした。今まで食べたレストランの中でも正に最高でした。

今の東京もそうですが、ニューヨークには、いろいろな国の料理が有り、家から近いアフリカ料理では、床に座ってクスクスと何か豆の煮込み料理を食べました。ダウンタウンはギリシャ料理屋が多く、ギリシャ料理も良く食べました。映画にもよく出て来るミッドタウンの「ロシアンティールーム」にも行きました。全体がワインレッドの装飾で、客席の後ろの壁は鏡になっています。向かい合った人の顔が映るのです。入口でキャビアを売っていましたが、そこではキャビアは食べませんでした。高級レストランだけあって、周りの人も素敵に着飾って、一流の人と言う感じでした。

ニューヨークでは、普通のレストランでも税金が高く、チップも払うので、低給与のサラリーマンなどは、頻繁に行かず、道路の屋台を利用しています。それにハンバーガーとピザを食べる人がやはり多いのですね。私たちは、いろいろな料理を食べますが、行き着く所は和食です。次はイタリアンでした。気に入っていたのは、チェルシーにある「マッパモンド」と言う小さなピザハウスです。そこもTさんに教えて貰ったのですが、形は丸く小さく、生地はフォアと焼けていて、乗っているサラダ用リーフが、生っぽくて、そこに粉チーズが掛かっているのですが、オリジナルな味で好きになりました。それと日本人がやっているオープンキッチンのイタリアン「バスタパスタ」も好きでした。事務所が17丁目に移り、近くなってからは、よく行きました。そこでは、オノヨーコに良く遭いました。

日本レストランで評判のいいお店は殆ど行きましたが、多く行ったのは、「寿司清」と「亀田」です。「亀田」は両国にもお店が有り、ご両親とお兄さんがやっているそうです。Kちゃんの紹介ですから、比較的リーズナブルです。そしてネタが良い事もありますが、カメちゃんが握ってくれるお寿司が素晴らしいのです。小ぶりで可愛らしく、お雛様のお寿司の様です。女性でも一口で無理なく食べられ、美味しいのです。どこのお寿司屋さんでもシャリを小さくと頼むのですが、カメちゃんのようなお寿司は見た事が有りませんでした。このお店には、有名人も来ていて、リチャード・ギアーも来るというので、楽しみにしていましたが、逢えませんでした。今でもあんなお寿司を食べたくなります。

普通の家庭料理も名前は忘れましたが、美味しい所が有りました。後は、ソーホー近くの本格的手打ち蕎麦「本村庵」です。本店は、荻窪だったと思います。そこのお蕎麦も日本と変わらず、とても美味しくて、時には京都の漬物が着いたからと出してくれました。アメリカ人も入っていて、淡白なお蕎麦も受け入れられるんだと思いました。ここでもオノヨーコに遭います。

そしてトライベッカに出来たロバート・デ・ニーロが出資したヌーベルジャパニーズ「ノブ」も素晴らしかったです。高級店ですが、予約を取るのが難しく、日本から友だちや母が来るとそこへ行ったものです。私は、新しいもの好きですから、ヌーベルキュイジーヌやカリフォルニア料理なども好きで、ロサンゼルスにヌーベルチャイニイーズのとても美味しいお店が有りました。
イーストリバーを越えてブルックリンの有名なステーキハウス「ピータールーガー」では、憧れのニューヨークカットステーキを食べましたが、これも最高でした。私たちは、肉の脂身が駄目なので、霜降りの和牛よりアメリカ牛のフィレが好きなのです。前に新宿の美味しいというステーキ屋さんで、1人2万円のフィレステーキを頼みましたが、霜降りで脂が多く食べないで帰った事が有ります。勿論お金は払いました。ですからここに来られたのは幸せです。ブルックリンには、川沿いに「リヴァーカフェ」と言う観光名所的なマンハッタンの夜景を楽しむレストランが有りますが、そこも日本からの友だちや母と行きました。その時は、消防艇が噴水の様に排水していて、それもなかなかの見ものでした。
メキシカンもスペイン料理も行ったのに、未だに食べた事がないのは、南米料理です。ターキッシュの屋台が美味しそうでしたが、食べる機会が有りませんでした。日本に帰ってから、なぜ食べなかったのだろうと思いましたが、一度食べたかったなと思います。

コーリアンタウンの韓国料理屋では、初めてプルコギを食べ、いろいろな小皿料理が出て来るのもびっくりしました。家の近所の大衆的中華料理は、量が多くて食べ切れないのですが、美味しかったです。セントラルパーク前の「ニルバーナ」と言う高級インド料理も行きましたが、カレーはどこが美味しかったか思い出せません。
夫は通りに面したカフェのテラス席で朝食を食べ、珈琲を飲みながら新聞を読むのが好きでした。仕事をしないで、のんびり町行く人を眺めながらの朝食は思い出しても素敵です。

ニューヨークに限らず、アメリカのレストランは、ドレスコードが厳しい所があります。日本から来た友だちとランチだから構わないと思い、夫とその友だちが半ズボンで行って、断られた事が有ります。ディナーでは、カジュアルと書いてあっても、男性はジャケットが必要だったりします。フロリダのフォートローダーデールで行ったやや高級なレストランにサンダル、ノージャケットで行ったら、駄目だと言われました。しかし予約をしていたので、店の人がジャケットを貸してくれ、足元が目立たないように隅の席に案内されました。女性はそれほど言われませんが、ジーンズはダメとかありますね。ディナーでは、一応ワンピースか、スーツのようです。ニューヨークの人は、ファッションに気を使いますが、地方の人は全然構わず、大抵はジーンズかジャージーなので、TPOにうるさく成ったのかも知れません。

最後にこんな話が有ります。Kちゃんがニューヨークに来たばかりの頃、日本レストランでウェイターをしていたそうですが、彼らは時給が安いので、チップで稼ぎます。ですから皆お客さんに対して感じよく振る舞うのですが、同じ店に伝説のウェイトレスがいたそうです。チップだけで、恋人にベンツを買って上げたというのです。その秘訣は、彼女の担当したお客さんの特徴をカードにして持っていて、次に来た時に「あら、サム、いらっしゃい」と席に案内し、「いつものでいい」と聞くのです。すると常連風に扱われたお客さんは良い気分になり、チップを弾むという訳です。そのカードには、「サム、ちび、禿げ、デブ、カツ丼」などと書いてあったそうです。私も散骨の仕事を始めてから、それを参考に顧客カードを作り、散骨の内容のデーターを保存しています。

※1990年代のお話です。今は無い所もあるでしょう。

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